安倍晋三総理大臣、辞任の意向を伝える

2007年9月12日午後1時前、首相官邸自民党幹事長室に、安倍晋三内閣総理大臣衆議院本会議の代表質問に答えられないとして、辞意を伝えたというニュース速報がありました。この情報は既に国会対策関係者を通じて与野党関係者に伝えられていると言うことです。12時45分から再放送されていた朝の連続テレビ小説は打ち切られました。自民党の麻生幹事長は、記者の質問について「聞いている」と答えたそうで、自民党執行部が対策を検討していると言うことです。
前回の参議院選挙で自民党は大敗し、民主党が第一党に躍進しました。その後、2007年8月21日に行われた内閣改造後も閣僚の不祥事が相次いで明らかになっています。また、インド洋で行われている海上自衛隊によるアメリカ軍などへの給油活動について、参議院与野党が逆転しているために、テロ対策特別措置法(テロ特措法)の延長が厳しい情勢となっていました。この問題について安倍首相はオーストラリアで行われたアジア太平洋経済協力会議APEC)でアメリカのブッシュ大統領と会談し、記者会見で「野党の理解を得るため職を賭していく。職責にしがみつくということはございません」と述べていました。安倍首相はおとといの10日、臨時国会所信表明演説を行ったばかりでした。
改造内閣誕生後の不祥事リスト

午後2時から総理大臣官邸で、安倍晋三総理大臣による緊急の辞任記者会見が行われるようです。辞職の理由について「求心力の低下」や「民主党への党首会談の申し入れが聞き入れられなかったこと」などが挙げられているようです。直ちに自民党総裁選挙の準備が行われ、新しい総裁が決まり次第、正式に内閣が総辞職する模様です。これを受けて予定されていた本日の本会議は中止され、代表質問も行われない模様です。
異例の事態です。安倍総理は、ここ数日眠れていないという情報もあり、昨日も記者の質問について「風邪気味」だと述べていました。心身共に弱っていたものと思われます。



2007年7月12日午後2時から首相官邸で開かれた安倍首相による緊急記者会見要旨

  • 「本日総理の職を辞するべきと決意を致しました」
  • 参議院の厳しい選挙結果を受け、改革続投を決意し努力してきた。
  • 主張する外交の中核である、テロとの戦い支援、国際貢献を止めてはいけないと考え努めてきた。
  • 民主党に党首会談が断られた。残念だ。
  • 今後、テロとの戦いを支援するためには、局面の転換が必要。新たな総理がよいのではないか。
  • 改革を進める上で、国民の支持や信頼を得るのが困難だ。
  • 「自らがけじめを付けることによって、局面を打開しなければならない。そう判断するに至った」
  • 党役員に決意を伝えた。
  • 政治の空白を生まないように、次の総裁を決めてもらいたいと指示した。
  • 早く決断しないといけないと判断した。
  • 以上

6分頃からの記者質問要旨

  • 参院選大敗直後に辞めるべきだったのでは?読売新聞
    • 改革を行う決意があり内閣改造・所信表明を行った。しかし、テロとの戦いを続けていく上で、私が辞した方がよいと判断した。
  • 辞職が自衛隊活動の継続に繋がるのか?
    • 私が総理であると野党との話し合いが難しい。自民党で新しいエネルギーを作ることがいいと考えた。
  • 自らの国際公約を投げ出すのは無責任では?共同通信
    • 約束を果たす上で、私が職を辞した方がよい環境ができる。
  • 国連総会が2週間後にあるが?NHK
    • 決断をしたばかりで日程的なことは決まっていない。なるべく早く後継の総裁を決めてもらいたい。力強く政策を進めていただきたい。
  • 戦後レジュームへの脱却が後退しないか?産経新聞
    • 新しい国造りでは、戦後レジュームへの脱却も果たしていかなければならない。教育・公務員制度など、成果も上げてきた。しかし、新たな局面の打開には新しいエネルギーが必要だし、なければ戦後レジュームへの脱却も進まない。
  • 総理の職責はテロとの戦いより、国民の生活全てでは?責任から逃げているのでは?朝日新聞
    • 総理の職責は重たいと考えている。述べたことを実行していく責任がある。だが、果たしていくことができないのであれば、政治的な困難を最小限にする観点から、はやく決断するという結論に至った。
  • なぜ所信表明後に?日経新聞
    • 職責を果たしていかなければならないと考えているが、職を辞することで局面を変えていかなければいけないと判断した。今日、党首会談が実現しないという状況で、判断した。
  • 困難な状況に至った原因と責任、反省点は?日本テレビ
    • 反省点は多々ある。私の責任で国民の信頼を得ることが出来なかった。
  • 以上
  • 党首会談はできなかったのか?中央新聞
    • 私が民意を受けていないというのが辞職の理由の一つ。参院選の選挙結果は大きい。新しい総理との会談を期待する。
  • 衆議院の再議決をすればテロとの戦いを突破できたのでは?本当の心境は?TBS
    • テロとの戦いでは中断すらあってはならないと考えていた。新法では日程的に、一時的に中断される可能性が高い。今判断した方が自民党の新たなスタートによいだろうと、国民の皆さんに混乱を招かないためによいだろうと判断した。
  • 以上



●テロ対策特別措置法
正式名称は「平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法」。2001年9月11日起こされたアメリ同時多発テロの首謀者とされるオサマ・ビンラディン氏を擁護するイスラム原理主義政権タリバンアフガニスタンから駆逐するために、アメリカ軍などがアフガニスタンに侵攻したのをうけ、日本はインド洋に海上自衛隊の艦船を派遣して給油などの活動を行うことになりました。この根拠となる法律がテロ対策特別措置法(テロ特措法)です。しかし、実際には給油された燃料のほとんどが、テロと関係が無く大量破壊兵器保有していなかったイラクへの攻撃を行っていた艦船に補給されており、給油だけでなくイージス艦などが戦艦の活動を助けていたことが明らかになっており、事実上の集団的自衛権の行使であり大きな問題となっております。
政府・与党は、テロ特措法の延長は困難と判断し、参議院で延長が否決された場合には衆議院で再可決する方針を示していたほか、活動の内容を給油活動に制限した新たな法律を提出することを検討していました。