米軍の掃討作戦が始まる

イラク暫定政府の首相からファルージャとラマディ攻撃の権限をあたえられたアメリカ軍は、11月8日、ファルージャへの攻撃を開始しました。アメリカ軍とイラク軍兵、合わせて約15,000人。ロイター通信によると、攻撃開始直後に民間人ら15人が死亡したということです。作戦名は、「アル・ファジュル(夜明け)」で、作戦の期間は明らかにされていませんが、アメリカのラムズフェルド国防長官は完全制圧まで続行すると語っています。これに先立ち、7日にはイラクの暫定政府首相アラウィ氏が、クルド人自治区を除くイラク全土に60日間の非常事態宣言を行いました。これには、日本の自衛隊が復興活動を行っている、サマーワも含まれます。毎日新聞では「宗教戦争の危険も」という記事を出しています。

アメリ

  • ラムズフェルド国防長官「途中でやめることは全く考えていない」「成功すればイラク国内のテロリストにとって大きな打撃だ」「米軍によって、多数のイラク市民が殺害されることは、まずないだろう」
  • 司令官「(武装勢力は3,000人規模。現在ファルージャに残っている民間人は)平時は20万人超で、うち5割から7割が避難済みと推定している」
  • パウエル米国務長官→エジプト、トルコ、サウジアラビア、ヨルダン、ポーランドの各国外相に電話説明

イラク

  • 暫定政府国防相ファルージャは完全に包囲された」
  • サドル師派のスポークスマン、アブドルラジ師「ファルージャへの攻撃は全イラク国民に対する攻撃だ」「占領軍を支援するな」
  • イラクイスラム聖職者協会「重大な誤りだ」「(宗教令として)米軍の攻撃に加わることはイスラムに反する」
  • ザルカウィ容疑者「戦争が始まった。聖戦の呼び掛けがなされた。あらゆる苦悩を受けているが、敵は、自分たちが損害を受けるような事態になることが分かるだけだ。あらゆる力を結集して抵抗しよう。辛抱すれば、神の助力により、数日で勝利が来る」

●日本

  • 小泉純一郎首相(政府見解に)「変わりはない」「選挙を実現させようとするイラク政府の考え方と、何とか妨害したいというテロリストとのせめぎ合いだ」「成功させないといけない。治安の改善がイラク復興のカギですから」「テロリストグループが混乱させようと動いていますから」
  • 細田博之官房長官サマワで特別何かが変わったという報には接していない。安全に万全を期すよう現地で対応している」
  • 町村外相「少なくとも法律でいう戦闘地域の定義にはあたらない」
  • 防衛庁首脳「兵力を分散させるために攻撃を激化させる可能性もあり、予断は許さない」
  • 鉢呂吉雄国対委員長イラク全土が戦闘地域だ」

●国連

  • アナン事務総長(武力による威嚇や行使は)「一定の共同体の疎外感を深めるだけでなく、イラクの人々の間に占領状態が続いているという認識をさらに強めることになる」

これにより、イラクの治安は収拾のつかない段階に入りました。今後の展開は、早期に停戦の合意がなされるか、来年の始めにある選挙までに武装勢力を鎮圧するか、武装勢力の活動が活発化し米軍が撤退するかの、いずれかになると思います。ただし、米軍は武装勢力を鎮圧するまで攻撃はやめないとしており、目下の所、選挙までに掃討が終わるか?という話になってしまいました。非常に不合理で、目的を欠いた、どうしようもない作戦です。国連と米国の溝は深まり、日本は米国支持をより一層強く打ち出し、イラク国内でも新たな対立が生まれました。民間人の死者も大幅に増えることが予想されます。一時は楽観視されたイラク戦争ですが、日本人が人質に取られたり射殺、惨殺される事件で10人もの被害者が出て、自衛隊の宿営地がロケット弾で襲われて、イラクでの死者は10万人を超え、その過半数が女性や子どもだと推定されています。戦争の根拠となった大量破壊兵器は存在せず、フセイン政権とテロリストの関係は立証されず、フセイン政権を崩壊させる為にイラクは何十万人の死者ととてつもない被害を出すことになりました。フセインがいいとは言いませんが、結局は民族問題です。しかも、その原因を作ったのは英米であり、(フセイン政権の)バース党を影で擁立したのもアメリカです。一体、いつまでこんな事を続けるのでしょうか。