植民地支配と侵略に反省とお詫び―小泉純一郎首相談話、閣議決定

第二次世界大戦中の太平洋戦争が終わり終戦60年目を迎える本日、日本国首相である小泉純一郎内閣総理大臣は午前中に開かれた政府の閣僚会議で「小泉純一郎首相談話」を決定しました。1995年8月15日の村山富市首相談話と今年4月のアジア・アフリカ会議バンドン会議)で小泉総理が行った演説を踏襲したもので、アジア諸国の植民地支配と侵略について反省とお詫びを表明しています。もちろん、よく問題になっている「謝罪」という表現はありませんが、自民党内から否定的な意見もあった中、英断であったと思います。
一方、中国国営の新華社通信のWEBサイトでは「[午间要闻]小泉表示要反省战争走和平之路」と大々的に首相談話を報じている一方、「各国要求日本反省」と、中国共産党の宣伝が大きく掲載されています。同サイトに設置されている掲示板では、談話そのものを拒否する意見が多いということです。(中国語はよく分からないので、伝聞ですが。)

以下、首相談話全文。

内閣総理大臣談話
 私は、終戦六十年を迎えるに当たり、改めて今私たちが享受している平和と繁栄は、戦争によって心ならずも命を落とされた多くの方々の尊い犠牲の上にあることに思いを致し、二度と我が国が戦争への道を歩んではならないとの決意を新たにするものであります。
 先の大戦では、三百万余の同胞が、祖国を思い、家族を案じつつ戦場に散り、戦禍に倒れ、あるいは、戦後遠い異郷の地に亡くなられています。
 また、我が国は、かつて植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。こうした歴史の事実を謙虚に受け止め、改めて痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明するとともに、先の大戦における内外のすべての犠牲者に謹んで哀悼の意を表します。悲惨な戦争の教訓を風化させず、二度と戦火を交えることなく世界の平和と繁栄に貢献していく決意です。
 戦後我が国は、国民の不断の努力と多くの国々の支援により廃墟から立ち上がり、サンフランシスコ平和条約を受け入れて国際社会への復帰の第一歩を踏み出しました。いかなる問題も武力によらず平和的に解決するとの立場を貫き、ODAや国連平和維持活動などを通じて世界の平和と繁栄のため物的・人的両面から積極的に貢献してまいりました。
 我が国の戦後の歴史は、まさに戦争への反省を行動で示した平和の六十年であります。
 我が国にあっては、戦後生まれの世代が人口の七割を超えています。日本国民はひとしく、自らの体験や平和を志向する教育を通じて、国際平和を心から希求しています。今世界各地で青年海外協力隊などの多くの日本人が平和と人道支援のために活躍し、現地の人々から信頼と高い評価を受けています。また、アジア諸国との間でもかつてないほど経済、文化等幅広い分野での交流が深まっています。とりわけ一衣帯水の間にある中国や韓国をはじめとするアジア諸国とは、ともに手を携えてこの地域の平和を維持し、発展を目指すことが必要だと考えます。過去を直視して、歴史を正しく認識し、アジア諸国との相互理解と信頼に基づいた未来志向の協力関係を構築していきたいと考えています。
 国際社会は今、途上国の開発や貧困の克服、地球環境の保全大量破壊兵器不拡散、テロの防止・根絶などかつては想像もできなかったような複雑かつ困難な課題に直面しています。我が国は、世界平和に貢献するために、不戦の誓いを堅持し、唯一の被爆国としての体験や戦後六十年の歩みを踏まえ、国際社会の責任ある一員としての役割を積極的に果たしていく考えです。
 戦後六十年という節目のこの年に、平和を愛する我が国は、志を同じくするすべての国々とともに人類全体の平和と繁栄を実現するため全力を尽くすことを改めて表明いたします。
平成十七年八月十五日
内閣総理大臣  小泉 純一郎