警察庁が犯罪者のDNA型情報データベース化

「DNA型情報は記録するが遺伝情報は記録しない」という意味が分からない方へご説明。人間のDNAというのは、遺伝情報(遺伝子)を記録する媒体でCDでいえばCDそのもの、遺伝情報(遺伝子)とは実際に記録されている音楽にあたるものです。人間はDNA(CD)に記録されている遺伝情報(遺伝子=音楽)を元に人体を構築するわけです。
というわけで、実際にDNA鑑定を行う際には、遺伝情報(遺伝子=音楽)を全て比較すれば間違いないわけですが、そんなことをしていると膨大な時間がかかってしまいます。そこで実際には、遺伝情報(遺伝子)と関係のないDNAの型情報を利用します。遺伝情報(遺伝子=音楽)の受け皿であるDNA(CD)には形にちょっとした特徴*1があり、その特徴は人それぞれ異なります。その部分を特殊な物質*2を利用して取り出し、形*3を比較することで同じDNAであるか確認します。同じDNA型を持つ人は、同じ人間だとほぼ断定できるのです*4
ここで大切なのは、DNA鑑定を行うときには遺伝情報は必要ないということです。遺伝情報とはつまり人体の設計図であり、病気の起こりやすさなどの究極の個人情報が含まれます。極端な話、遺伝情報さえあれば同じ人がもう一人できます*5。これは倫理的に問題であろうということで、遺伝情報は記録しないことになったのです。ちなみに、親子関係はDNA型で調査可能ですが、遺伝病は遺伝子鑑定が必要になります。
そこで、新聞各社の記事を見てみます。

  • 共同通信】DNA型情報について9月1日から登録を開始し、(中略)遺伝情報を含む部分は利用しないことを明確にするため、鑑定するDNAの部位を明記した。
    • 100点。
  • 【読売新聞】DNA(デオキシリボ核酸)情報を、9月1日からデータベースに登録することを決め、(中略)DNAのうち遺伝子情報を含まないとされる11の部位に限定すると明記
    • 「DNA(デオキシリボ核酸)情報」というのが、ちょっと意味不明。これだったら「染色体情報」の方が良くないだろうか。「含まないとされる」という表現は気が利いていてOKですが、いつもながら意味不明度が高い様子。「遺伝子情報」という表現も…どうだろう。「遺伝情報」と言えばつまり遺伝子によって継承される統合的な情報を指すわけですが、「遺伝子情報」と言えば、その遺伝子の個別の情報を指すことになると思うのですが…。
  • 時事通信】DNA型情報データベースの取り扱いに関する国家公安委員会規則を定め、9月1日からの運用開始(中略)遺伝情報などを含まないDNAの11領域を登録対象に明示
    • 「遺伝情報など」の「など」って何だ?「含まない」と断定してよいのか?DNAの「領域」という表現も、他社とは異なるけれど…どうだろう。
  • 朝日新聞】DNA型記録取扱規則を定めた。施行は9月1日。(中略)病気や遺伝情報を含む部分は登録せず
    • 記事の内容はDNA鑑定について仕組みや精度を解説してあり一番詳しく秀逸。ただ、唯一「病気を含む部分」という表現が分かりづらかく、遺伝情報を何故登録しなかったのか言及がなかったのが残念。
  • 産経新聞】DNA型情報について9月1日から登録を開始(中略)登録する型情報はDNAの中で遺伝情報を含まないことが明らかになっている11カ所。
    • 「含まないことが明らかになっている」という表現がいかにも産経らしいですね(^-^;)

というわけで、勝手にランク付け。朝日>共同>時事=産経>読売。この手の記事は読売新聞はいつも「これはどうか?」と思うような記事をのっけているので、読売新聞は嫌いです。共同も科学関係には疎く、時々「PCウイルス」とか面白い言葉を作るので好きではないのですが(おかげで「PCウイルス」も「HP(ホームページ)」も一般的な言葉になってしまった…)、今回はうまくまとめられていました。毎日新聞のWEB版では、今回の記事をまだ見つけることができず残念です。

*1:塩基配列がくり返している部分

*2:酵素

*3:長さ

*4:100%断定することはできず、警察などが捜査にDNA情報を使い始めた当初は間違いも多かった

*5:現在の科学技術では無理です