神社本庁、女性天皇容認議論を批判

全国8万社を包括する巨大宗教法人「神社本庁」ですが、先日政府の皇室典範に関する有識者会議が「女性・女系天皇容認」とした報告に対し、神社本庁の矢田部正総長が次のようなプレスリリースを出しました。

総長談話
此度、内閣総理大臣の私的諮問機関である「皇室典範に関する有識者会議」は、約一年間にわたる議論の結果を取り纏めた報告書を小泉総理に提出した。神社本庁は本年三月、皇室の歴史と伝統を踏まへた基本的な姿勢を明らかにし、有識者会議等における論議の行方を注視してきたところである。
しかるに今般提出された報告書の内容を見る限り、そこに示された皇位継承制度のあり方やその論拠には、皇室の歴史と伝統を謳ひながらも、現今の少子化問題やいはゆる「ジェンダー・フリー」などで主張される特定の価値観が前提とされてをり、あたかもそれを国民に押し付けるかの如くである。しかも、私的諮問機関が皇位継承制度を含む皇室典範の早期改正にまで言及してゐることは、拙速かつ越権の誹りを免れず、極めて遺憾と言はざるを得ない。
そもそも皇位は、百二十五代にわたつて男系により継承されてきた事実があり、その歴史的な重みは、制度的安定を主たる理由として軽々に斥けられてはならない。皇位は報告書の目指す制度的安定のみで将来に継承されるものではなく、皇室と国民の紐帯によつて確固として受け継がれてゆくものである。
神社本庁は報告書に対して、改めて深い憂慮の念を表明するとともに、皇位継承制度のみならず憲法皇室典範のあり方を含めて、政府、国会並びに国民の真摯な議論を望むものである。
平成十七年十一月二十五日
神社本庁総長 矢田部 正 巳
※原文は縦書きです。尚、神社本庁では歴史的仮名遣ひを使用してゐます。

今まで何も反応がなかったので心配していたのですが、かなり大きく反応されたようなので楽しく拝見させて頂きました。
今回の議論は天皇家に、ここ40年程男性がお生まれになられていないことから、象徴天皇制の存続が危ぶまれているために、内閣や宮内庁のOBらが中心になって1997年から極秘に行われていたもので、紀宮様がご結婚されて皇室を離れるなどのイベントが起こったここ数ヶ月で、急速に公になり公式な報告も行われるに至りました。
従って、ジェンダー・フリーが事の根底にあるかどうかといわれれば、「無い」ということになるとは思います。実際、古くは女性が天皇になった例もあります。ただ、ここ125代については男系の天皇しかしなかったのも事実ですし、これを変えるとなると、歴史的な出来事になってしまうのです。
個人的には神道は嫌いではありませんが、天皇制(象徴天皇制)には現在の日本において必要のあるものだとは思いませんし、誰が天皇になっても関係のないことです。女性が天皇になってはいけない理由というのも特に存じませんし、神社本庁が何を批判しているのか分かりかねます。
報告書公表までの過程が外から見て拙速だったのは事実ですし、議論はもっとしても良いようにも思いますけれど。
…それにしても、基本的に天皇は宗教「神道」の教祖みたいなもの(っていうかネ申)ですから(古事記日本書紀天皇が編纂させたものですし)、政治上の問題で勝手に後継者を変えられたら神社側は、たまったものではありませんね。政教分離を公言しつつ天皇制を維持している点に違和感を感じますが、政府側は現在の方針を変えるつもりもなさそうですし、どうなるんでしょう。
あと、女系天皇反対派として「皇室典範の拙速な改悪に反対する全国地方議員の会」とか「皇室典範問題研究会」などの団体が登場してきたみたいです。一部の皇族や旧皇族からも意見が出ていると言うことですが…、かなりの少数派のようで、苦しそう。がんばってください。