昭和天皇がA級戦犯の靖国神社合祀に不快感を持っていた件について

A級戦犯靖国神社に合祀されて以来、天皇陛下靖国神社に参拝することはありませんでした。これについて、政教分離を定めた憲法や、政治的・社会的な問題から参拝できる状態ではなくなったとする意見がある一方、昭和天皇A級戦犯の合祀に批判的であったとする意見も通説でした。
さて、昭和天皇A級戦犯靖国神社参拝に不快感を持った理由について、報道やWikipediaなどの記事を見るに、次のような理由があったと考えます。▼一つは東京裁判を日本政府が受け入れ天皇の戦争責任が回避されていたこと。また東京裁判A級戦犯にされた一部の人に負い目を感じていたこと。▼昭和天皇は平和主義者だったこと。▼A級戦犯として合祀された松岡洋右元外相*1らが嫌いだったこと。
昭和天皇第二次世界大戦時の天皇だったということで、さぞや国粋主義的で強硬な思想の持ち主だとばかり思っていたのですが、辞典等を見てみると、どうやら平和主義的な思想を持ちリベラルな考え方の持ち主であったようです。昭和天皇崩御された際にNHKのテレビ放送でしきりに崩御のニュースが流れていたことを覚えているのですが、当時幼稚園児だった自分は天皇陛下が何かを知る由もなく、台風以外に同様の報道体制が取られるのを見たことがなかったので、きっと台風通過並みの何かなんだろうな…と思ったものでした。その後、小学校の歴史の授業で第二次世界大戦を始めたときの天皇と習い、中学高校と同様に学んで社会人に。天皇制についてはサブカルチャー的な方面から眺めていました。
天皇は時として右翼の象徴的存在として語られます。それには、天皇が1,000年以上「万世一系」を貫いた日本の思想的な柱であるとともに、「君臨すれども統治せず」を原則として途絶えることなく日本の頂点として君臨してきた歴史があり、また幕末から第二次世界大戦にかけて国を動かす拠り所として保守派の信仰の対象とされてきた歴史もあります。(今なお、天皇を国家体制の中央に据えようと考えている人もいますが、そこまで傾倒するのは個人的に疑問です。)
靖国神社に祀られるということは、その尊重している天皇のために戦死し、天皇に慰霊してもらえるということですから、大変な栄誉であるわけですが、一部のA級戦犯靖国神社に祀ることについて、昭和天皇自身が不快感を持っていたことが明らかになりました。以前から、そのような感情を持っていたとは考えられていましたが、これほど決定的な資料が出てきたのはこれが初めてです。
A級戦犯A級戦犯の遺族の人にとっては寝耳に水だと思いますし、天皇陛下の意志をくんだ上で靖国神社においては対応を検討するべきでしょう。個人の信条や宗教上の問題であると思うので、政治問題化するのは間違っていると思いますが、現在与党の自由民主党天皇神道靖国神社への接し方に特別なスタンスを持っている以上、政治問題化は避けられないと思います。
…個人的に一番思ったのは、天皇陛下が平和主義者で自由な考え方を持った人だと知り、嬉しい気持ちになりました。

*1:結果的に日米開戦を決定づけた