東京都教育委員会の「君が代強制」は違憲

東京都が都の教職員に対し、入学式や卒業式で『日の丸』掲揚の際の起立や『君が代』斉唱を強制し、従わなかった教職員を懲戒処分していた問題で、東京地方裁判所難波孝一裁判長)は2006年9月1日「起立や君が代の強制は憲法で保障された思想・良心の自由を侵害する」「教育基本法10条1項で定めた『不当な支配』に該当し違法」とする判決を出しました。
これは2003年10月23日に東京都教育委員会が都立学校の校長に「入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について(通達)」*1と題する通達を出していたもので、これまでに300人以上の教職員に対し懲戒や指導、嘱託不採用(解雇)等の処分が行われています。今回の判決では「明治時代から終戦まで、軍国主義思想などの精神的支柱として用いられ、国旗、国歌と規定された現在においても、国民の間で中立的な価値が認められたとは言えない」と指摘、「懲戒処分をしてまで起立させ、斉唱させることは、少数者の思想良心の自由を侵害し、行き過ぎた措置だ」としています。

中村正彦東京都教育長「これから判決内容を検討するが、たぶん控訴することになると思う」「判決による学校現場の混乱は避けたい」「個人の思想・信条の自由があるとはいえ、学校現場で学習指導要領に反する姿勢を生徒に見せることが教育なのか」「一部報道では、日の丸・君が代軍国主義を連想させると言うが、戦争に至った経緯とは関係がない」

石原慎太郎東京都知事「控訴しますよ。方針は変わらない」「式典で国旗・国歌に敬意を払う行為は(学校に)規律を取り戻すための統一行動の一つ。裁判官は実態を見ていない」「義務を怠った教師が懲戒処分を受けるのは当たり前」

杉浦正健法務大臣(一議員としての個人的な感想として)「私の地元では戦前も戦中も戦後も整然と国旗は掲揚され、国歌は卒業式でも入学式でも歌われている。ああいう裁判が起こること自体がちょっと信じられない思いだ」「『血塗られたユニオンジャック』という表現があるくらいだが、それでも英国民は国旗として変えない。そこを思い起こしてほしい」

小坂憲次文部科学大臣「これまでの判決と照らして予想外で、都教委の主張が認められなかったことは驚き」

◆記者 ☆小泉純一郎内閣総理大臣
◆東京都が式典で国歌斉唱などを命じる通達は違法であるという判決が下されました。この判決どのようにお考えでしょうか。
☆いや判決は聞いていませんけども、法律以前の問題じゃないですかね。人間として、国旗とか国歌に敬意を表するというのは。
◆それを強要することは、については、どのようにお考えですか。
☆まぁ、強要以前の問題じゃないですかね。人格の問題とかね。人柄の問題とか。礼儀の問題とか。法律以前だと思いますね。
◆総理、一部あの憲法19条の保障する良心とか思想の自由について、まぁ、教員が実際に大量に処分されているというような現実ですけど、どうご覧になりますか。
☆これ裁判やってるんでしょ。裁判でよく判断をだしていただきたいですね。



靖国神社など保守色の強いところでは、君が代天皇を仰ぐ歌、日の丸は天照大神を讃える歌であるとされていますし、東京都教育委員であった米長邦雄永世棋聖は、2004年10月28日に赤坂御苑で開かれた園遊会にて天皇陛下に対し「日本中の学校で国旗を揚げて、国歌を斉唱させるのがわたしの仕事でございます」と話しています。(その時に天皇陛下が「やはり、強制になるという考え方でないことが望ましいですね」とお答えになったのは有名な話です。)

参考:日本国国歌「君が代」の歌詞
君が代は千代に八千代に細石の巌となりて苔の生すまで

*1:いわゆる「10.23通達」