暗黒物質の分布を観測、日米欧の国際チーム

日米欧の研究チームが、しし座方向にある約50万個の銀河とその周辺をハッブル宇宙望遠鏡などで観測し、「重力レンズ効果」を考慮して暗黒物質の分布と質量を求め、奥行き約80億光年・縦横が最長で約2.7億光年の範囲の暗黒物質の分布を示した立体図を作ったと言うことです。2007年1月8日にイギリスの科学誌ネイチャー電子版に掲載されたとのこと。英語の読める方で専門用語の分かる方はどうぞ。
http://www.nature.com/news/2007/070101/full/070101-7.html
暗黒物質」とは、その名の通り光っていない(電磁波を出さず反射もしていない)ので見えない物体のことで、回転している銀河系について「光を発している部分の質量だけでは回転具合がおかしい」と言うことで提唱されたものです。今回は、重力によって光が曲がって見える現象である「重力レンズ効果」を利用して、光がどの様に曲がったのかを調べ、光がその様に曲がるには暗黒物質がどこにどの程度あればよいか計算したのだと思います。
Wikipediaによる「暗黒物質」の名前の由来。

暗黒物質の存在は、ヴェラ・ルービンにより指摘された。水素原子の出す21cm輝線で銀河外縁を観測したところ、ドップラー効果により星間ガスの回転速度を見積もることができた。この結果と遠心力・重力の釣り合いの式を用いて質量を計算できる。すると、光学的に観測できる物質の約10倍もの物質が存在するという結果が出た。この銀河の輝度分布と力学的質量分布の不一致は銀河の回転曲線問題と呼ばれている。この問題を通じて存在が明らかになった、光を出さずに質量のみを持つ未知の物質が暗黒物質と名付けられることとなった。

同じことを読売新聞が書くとこうなる。

銀河は宇宙空間に一様に分布せず、無数の泡を形作るように散らばっている。この「泡構造」がなぜできたのかを説明するには、観測から推定した銀河の総質量では足らず、その質量を補完するために仮想的な物質として提唱されたのが、暗黒物質。(読売新聞のWEBサイトより引用/2007年1月8日3時16分掲載)

確かに宇宙は泡のような構造になっているけれど、それは暗黒物質とは、あまり関係がないような…。別に暗黒物質は仮想的な物質ではないし。読売新聞は、どっから宇宙の泡構造について持ち出したんだろうか。(それとも泡具合(?)が現在の泡具合になるためには、既知の物質だけでは質量が足りないと言いたかったのかな?)…他の新聞の記事を読むに、研究チームは暗黒物質の密度ムラによって通常の物質が引き込まれ銀河が誕生したとする仮説を検証、銀河の分布とダークマターの分布が近いことが分かったので仮説を裏付けることができた…ということのようです。
ところで、産経新聞の記事。

暗黒物質は「超対称性粒子」という未知の素粒子の可能性が指摘されており、その実体が分かれば宇宙論に画期的な進展をもたらす。

暗黒物質が何であるか分かれば大発見ですけれども、今回の成果とは、あまり結びつかないような。