アフガニスタンでタリバンが韓国人を殺害

2007年7月20日アフガニスタンで、自らタリバンであると主張する勢力が韓国人23人を拉致したことが明らかになりました。2007年7月25日夜には8人が解放されたという報道が行われましたが、どうやら誤報であったようです。2007年7月26日、韓国人1人が死亡したことが犯行グループやアフガニスタン政府の発表で明らかになりました。殺害されたのが誰かは分かっていませんが、韓国人グループのリーダー的存在で42歳の牧師であるようです。
タリバンアフガニスタンを実効支配していたイスラム主義の武装勢力です。タリバンは2001年9月11日にアメリカで起きた同時多発テロにおいて首謀者との関連が指摘され、アメリカは2001年11月にアフガニスタン侵攻を行い新政権も樹立しシマした。しかし、2007年現在においてもタリバンや地元勢力による抵抗が続いており治安の回復には至っておりません。現在外務省はアフガニスタンの首都カブール及びジャララバード、ヘラート、マザリ・シャリフ、バーミアンの各都市について「渡航の延期をお勧めします。」、これらを除くアフガニスタン全土に対して「 退避を勧告 します。渡航は延期してください。」という渡航情報を出しています。
一方、拉致されたのは医療ボランティアの目的でアフガニスタン渡航していた韓国人のキリスト教徒ら23人です。ほとんどが20代から30代で、6人が男性、17人が女性だと言うことです。2007年7月19日にガズニー州のカラバーグ地域でバスに乗っていたところを拉致されたようです。当初人数が錯綜して18人とか20人とか伝えられていました(どうも犯行グループが現地語を話す韓国人5人を現地人と誤っていた様です)。韓国政府でもアフガニスタンへの渡航制限を行っていたようですが、23人は無視してアフガニスタン渡航したようです。韓国では約3割の人がキリスト教徒で熱心な布教活動を行っています。今回現地で布教活動が行われていたかは分かりませんが、イスラムではイスラム教を含め布教が禁止されており反感を買った恐れもあります。韓国では新旅券法と旅券法施行令を発効しイラクソマリアへの渡航制限を行う予定でしたが、今回の事件を受けてアフガニスタンへの渡航制限も行うことを検討していると言うことです。
犯行グループは当初、韓国政府に対して韓国軍のアフガンからの撤退、アフガニスタン政府に対して23人の服役同胞の解放を求めていましたが、韓国政府は軍の撤退を拒否、アフガニスタン政府も解放を拒否しました。タリバンと見られるグループは人質殺害の期限を示し、要求を「ガズニ州刑務所の服役メンバー全員の釈放」に変更。韓国政府やアフガニスタン政府らと交渉を続けていました。なお、犯行グループは21日、別に拉致ししていたドイツ人2人を殺害したと発表、アフガニスタン政府は死亡したのは1人でストレスで死亡したとしていますが確認できていません。



今回の件について韓国では23人の行動が軽率だとして大バッシングが起きているそうです。
日本でも「自己責任論」の名の下にイラクで拉致された人がバッシングを受けました。日本の場合、最初に拉致されたのが左派系メディアのカメラマンとジャーナリスト志望の少年及び女性のNPO関係者であり、犯行グループの要求が自衛隊イラクからの撤退であたったため、実質的な戦地に初めて自衛隊が派遣され喜んでいた右派勢力はもとより、一般の市民からも激しいバッシングを受けることになりました。その後、フリージャーナリスト2人も拉致されましたが5人とも現地の有力者や指導者が解決に強力したため無事に解放されました。
その後、再びイラクにて、バックパッカーの青年1人(香田証生さん・24歳)が首を落とさる形で殺害され、殺害される様子が映像がインターネットで公開されました。要求は同じく自衛隊の撤退でしたが、遺族が「息子は自己責任でイラクに入国しました。危険は覚悟の上での行動です」「彼の死を政治的に利用しないで欲しい」というコメントを発表、大きなバッシングは起きませんでした。
更にイラクで軍事専門家の日本人1人が殺害されていますが、この時に襲撃されたのはイギリス人で、日本政府には特に要求はなく、バッシングはありませんでした。
これとは別に外交官2人とジャーナリスト2人がイラクで殺害されており、イラク戦争やその前後の混乱で武装勢力によって殺害された日本人は6人になります。

犯行グループの要求に沿うことは、「テロリストに屈することだ」という主張があります。日本ではダッカ事件日本赤軍の要求に従い、身代金と服役中・拘留中のメンバーを釈放、海外から「日本はテロまで輸出するのか」と批難されたと言われています。しかし、本当のテロ・テロルとは主張は恐怖によって政治思想を吹聴する方法を指すのであり、人質が殺害されれば術中にはまったも同じです。ダッカ事件当時も海外ではテロの要求に従うのは至極当然のことでした。アフガニスタン政府もしばらく前までは、テロの要求に従って服役・拘留中のメンバーを釈放するなどしていましたが、アメリカ政府などの批判を受け釈放しない方針に転換しました。アメリカの対テロ政策の失敗により世界中でテロが増加しています。テロの要求に従うことが必ずしも良い結果を生まないことは明らかですし、基本的には従わないのが当然です。しかし、時には柔軟な対応をとることも必要ではないでしょうか。また、何故テロが発生するのか把握し、テロを発生させない世の中に変えていくことも必要ではないでしょうか。
テロは要求が通っても通らなくても「成功」なのです。