イラク暫定国民議会選挙開始

日本時間の今日午後1時から、イラクで暫定国民議会選挙が始まりました。午後3時にバグダッドから中継をしたNHKの記者は、まず「先ほどから、あちこちで爆発音が聞こえています」と話しました。共同通信AP通信が伝えたところとして報じたところによりますと共同14:49付けで、テロにより警察官一人が死亡、共同16:21付けで各地の死者が少なくても7人、共同17:15付けで死者が12人、共同18:00付けで自爆犯も含め計17人が死亡、共同19:19付けで27人死亡したと伝えています。バグダッドでは昨日、アメリカ大使館にミサイル弾が打ち込まれアメリカ人2人が死亡したほか、各地で自動車などを用いた爆弾テロが相次いでおり、毎日数十人の死者が出ています。投票は日本時間の午後11時、現地時間の午後5時まで行われる予定です。
イラクイスラムスンニ派シーア派の住人、それにクルド人の大きく分けて3つの民族が住んでいます。イラク戦争で倒されたフセイン大統領は、少数派で首都バグダッド付近に住んでいるスンニ派の住人を大切にし、シーア派の住人に弾圧を加えクルド人を虐殺するなどしていました。今回の選挙では、多数派のシーア派が選挙を征する公算が大きく、時事通信が伝えたところ、アメリカの調査会社ゾグビーが発表した調査では、スンニ派の住民の76%が「投票しない」と答え、62%が「選挙の延期」を支持し、「米軍の即時撤退」「新政府発足後の早期撤退」には82%が賛成しています。尚、シーア派の69%も米軍の即時撤退か早期撤退に賛成しており、イラク人は米軍の治安維持活動を快く思っていないことが明らかになりました。また、産経新聞が伝えたところでは、シーア派は80%が選挙に行くと答えたと言うことです。
一方、香田証生さん(当時24歳)を殺害したとされるヨルダン人のテロリストで一部では国際テロ組織アルカイダ幹部とされる、アブムサブ・ザルカウィ容疑者が、「選挙に参加するあらゆる者を攻撃する。これは最後の警告だ」という声明を発表し、イラク国民合意(INA)*1から立候補していたサレム・ジャアファル・カナニ氏を殺害するなどテロ活動を活発化させています。

産経新聞が伝えたアナン事務総長のお言葉
「選挙は、いかなる国家でもその将来を決めるのに最善の方法だ。日曜日にはあなたたちの民主的な権利を行使してほしい」「有権者や候補者、選挙支援職員への脅しや殺害行為は決して正当化されない」「国民が自由に安全に投票する権利を奪わないでほしい」

ところで、共同通信時事通信朝日新聞がイギリスの公共放送BBCが28日「イラク民間人の死者の6割は多国籍軍イラク軍によって殺害された」と報じたと伝えています。これらの記事によりますと、BBCが入手した「イラク保健省が集計した民間人の死傷者データ(武装勢力は含まず)」を検証した結果、殺害された一般住民の62%にあたる2,041人は多国籍軍イラク軍によって殺害されたとしています。統計的に調査した結果、イラク人は10万人以上が死亡し、その半数以上は女性と子どもであるということが分かっていますが、もし同じ比率で殺害されているとすれば、これは大変なことです。BBCは今日、この報道について誤りであったと報じました。死者数に武装勢力のメンバーも含まれるということで、民間人の死者数は特定できないということです。

話は変わりますが、イラク暫定政府のアラウィ首相が27日サマワを訪れましたが、今度撤退することが決まっているオランダ軍には謝辞を述べたものの、自衛隊には何もなかったそうです。残念。イラクサマーワ自衛隊は今日は「宿営地の外での自衛隊の活動を自粛(NHK)」し「当面は、宿営地の外での活動を縮小する(NHK)」そうです。また来月からは「50人いた給水のための要員を30人程度減らして、警備要員にまわす(NHK)」そうです。がんばれ自衛隊時事通信によると、サマワのあるムサンナ州では英陸軍部隊「ロイヤル・ハイランド・フュージリアーズ大隊」の一部が国民議会選挙のために警戒活動を実施しているということです。

*1:アラウィ首相の政党