小泉首相、靖国神社に参拝

小泉純一郎日本国内閣総理大臣は、2006年8月15日午前7時41分、東京九段の靖国神社に到着、マスコミや終戦の日のために参拝客がごった返す中、本殿で一礼する形で神社を参拝しました。首相官邸を出たのが7時30分頃、靖国神社では小雨が降っており、小泉総理はモーニング姿でした。「内閣総理大臣 小泉純一郎」と記帳、献花料は3万円で私費だと思われます。8時10分、首相は公邸に到着しました。
マスコミには首相官邸から朝の早い段階で、参拝するという情報が流れていたようです。テレビ各社は一斉に参拝の様子を報道しました。(曰く、設置できるカメラの数が限られているとのことで、チャンネル毎に見られる場所が異なっていました。)
小泉総理大臣は2006年8月15日午前9時46分から首相官邸で記者会見を始めました。16分にわたった会見の内容は以下の通りです。

■今回はどのようなお気持ちで参拝されましたでしょうか。
◇これは毎回申し上げているんですが、日本が過去の戦争を踏まえ、反省しつつ二度と戦争を起こしてはならない、そして今日の日本の平和と繁栄というのは現在生きている人だけで成り立っているのではないと。戦争で尊い命を犠牲にされた、そういう方々の上に今の日本というのは、今日があると。戦争に行って祖国のため家族のため、命を投げ出さなければならなかった犠牲者に対してコウカ(?)なる経緯と感謝の念を持って、靖国神社に参拝しております。今年ね、その気持ちに変わりはありません。今までの過去五年間の私の靖国神社参拝に対する批判をね、よく考えてみますと、おおかた三点に要約されるんじゃないかと思います。まず、一つはね、中国韓国が不愉快に思っている。反発してるから止めろという意見。これはどうですかねぇ。私は日中日韓友好論者なんです。就任以来、現に中国や韓国とも友好交流、様々な分野で拡大を続けております。そういう中で、どの国ともね一つや二つ意見の違い、対立あります。それで、一つの意見の違いがある、不愉快なこと、あると。それによって首脳会談を行わないことがいいのかどうか。私はいつでも首脳会談を行う用意があるといっているんですよ。しかも、靖国神社参拝を条件にして、この参拝をしなければ首脳を行うと。するならば首脳会談は行わないというのは、はたして、いいのかどうか。私はこれは宜しくないと思います。日本の首相というのは民主的な手続きによって選ばれた首相であります。日中間、日韓の間には様々な考えもある。私は今までの日中首脳会談、日韓首脳会談によっても、未来志向で友好を図っていこうとお互い相互互恵、相互依存関係、これを深めていこうと。中国の発展、韓国の発展というのは、日本に驚異と言うよりも、むしろ日本にとってもチャンスだということをはっきり表明して、未来志向で友好交流を進めていこうということを申し上げているんです。それに対して、私を批判する方、これは、しかし中国がいやがっていることはやるなと。つきつめていくと、中国韓国が不快に思うことはやるなと、いうことでしょ?これについて批判する方どう思うか。もし私が一つの問題で私が不愉快に思う、ま、仮にね。中国韓国が日本の安保理常任理事国入りに反対してます。これは、日本にとっては不愉快だと。だから私は、中国韓国と首脳会談を行わないといったら、どちらを批判するでしょうか。私は中国が反対しても、韓国が反対しても、首脳会談をいつでも行いましょうと、言っているんですよ。今回もそうですね。私が拒否しているんじゃないですよ。ということは、中国の嫌がることはやめなさいというのは、靖国に反対の批判の一つですね。中国に不快な思いをさせちゃいけません。中国の言うことを聞きなさい。韓国の言うことを聞きなさい。そうすればアジア外交は上手くいきます。私は必ずしもそうじゃないと思いますね。一つや二つどこの国も意見の違いや対立はあります。そういうのを乗り越えて未来志向で友好関係を進展させていくのが日本としても他国にしても大事じゃないでしょうか。中にはね、小泉はアメリカと親しいと、アメリカのブッシュ大統領靖国に参拝するなと言えば、しないだろうと。そんなことはありません。ブッシュ大統領靖国に参拝するなと私に言ったとしてもですよ、私は行きます。もっともね、ブッシュ大統領は、そんな大人げないことは言いませんけどね。
もう一つはね、A級戦犯が合祀されているから行っちゃいかんという議論。これはね、私は特定の人に対して参拝してるんじゃないんです。この戦争でね、苦しい思いをされ、できれば避けたかった戦場に行きたくなかった、多くの兵士がいるんです。そういう方々の気持ちを思ってね、なんという苦しい辛い体験をせざるを得ない時代に生まれたんだろうかと、そういう犠牲者に対してね、心からやっぱり哀悼の念を表すべきだなと。これは日本の文化じゃないでしょうか。特定の人がいるから、後の人のことは考えなくていいと。一部の、自分では許せない人がいるから、それより圧倒的多数の戦没者の方々に対して、哀悼の念を持って参拝するのが何故いけないのか。私はA級戦犯のために行ってるんじゃないですよ。多くの戦没者の方々に哀悼の念を表す、二度とこの様な苦しい戦争、さしてはいけない、そういう気持ちで参拝してるんです。
それと、第三点。憲法違反だから、靖国神社参拝しちゃいかんという人があります。これもね、憲法第九条、十九条、第二十条。これよく読んでいただきたい。私は、神道を奨励するために靖国神社に行ってるんじゃありません。今説明したように、また過去の戦争を美化したり正当化したりするために行っているんじゃありません。また軍国主義を称揚する、そういうような気持ちでいっとるんでもありません。今申し上げたように、二度と戦争を起こしてはいけない、戦没者に戦争に行って倒れた方々、そういう方々の犠牲を片時も忘れてはいけないと、そういう気持ちでお参りしているんです。そして、第十九条の思想及び良心の自由はこれを犯してはならない。これどうかんがえますか。まさに心の問題でしょ。これを日本の首相が日本の施設にお参りするお祈りする。それを外国の政府、もっともだと言って、小泉はいかん、小泉を批判する。これが本当にいいことなのかどうか。今の日本の誰にでも許されている自由という問題をどう考えるのか。私は伊勢神宮にも毎年参拝しています。そのときには、何名かの閣僚も随行しています。別に私は強制していません。そして皆さんの前で、神道形式に則って、やす、伊勢神宮に参拝しています。その時に憲法違反という声、起こりませんよね。何故なんでしょう。私は、こういうことから、賛否両論あっていいんです。日本は言論の自由認められていますから。今までもういうことを私は答弁なり、普段の話でしているんです。今回も全くその同じ気持ちで参拝しているんです。
■なぜ今回、その…8月ーあの、終戦の日の8月15日を、あの、選ばれたのでしょうか。
◇これはね、最初、まぁ多くの方々が8月15日だけはやめてくれと。様々な方から言ってまいりましたね。まぁ、そういう方々の意見も聞かなきゃいかんなと、いうことでね、あえて、15日を避けて参拝してきました。えー13日8月、あるいは4月、10月、1月と、しかし8月15日を避けても、いつも批判や反発。そして、なんとかこの問題を取り上げようとする勢力。変わらないっすね。いつ行っても同じです。ならば、今日は、適切な日ではないかなと。これから、戦没者の追悼記念式典も行われます。私はこれから、千鳥ヶ淵戦没者墓園にお参りします。戦没者の追悼式典にも出席します。適切な日だなと判断いたしました。
■去年参拝した際は、その、昇殿もせず、あのー、昇殿をあのー、せずに、あのー、記帳もしませんでした。今回の参拝ではモーニング姿で、えー、ま、内閣総理大臣と記帳して昇殿もしたということなんですけれども、その理由についてお聞かせ下さい。
◇今お話ししてきたようにね、今日は戦没者の追悼式もありますし、千鳥ヶ淵戦没者の墓園にも参りますし、その時には、この(フラッシュの音で聞き取れず)、私はきちっと昇殿、本殿に参拝した方が、今日はみんな騒いでいますから。あのような去年みたいな形で行くと、警備の方も大変ですよ。皆さん、大勢の方々が見えてるしね、そういうことも考えて本殿に参拝するのが適切じゃないかと思いました。
■二回目の参拝の時の所感の中ではですね、終戦記念日やその前後の参拝にこだわることは、こだわってですね、再び内外に不安や警戒を抱かせることは、私の意に反するとしていました。今日の参拝は、その所感と矛盾するのではありませんか。
◇矛盾しません。それは、過去五年を踏まえて、いついっても問題にして混乱にしようとする勢力があるんです。それはもう仕方ないんです。そういうことを踏まえて、過去の経験が生きてきたんですね。いつ行っても参拝し、に、なんとか争点にしようとか、混乱させようとか、騒ぎにしようとか、国際問題にしようとか言う勢力はあるんです。これに対してね、いけないといったって、それは、日本は言論の自由が認められているんですから、どうにもなりません。ですからいつ行っても、こういう騒ぎにしようという勢力はあるんですから、それは8月15日に行っても適切じゃないかなと。また、むしろこだわってるのはね、毎回、こだわろうという勢力がいるんですよ。私が今まで靖国神社の問題も質問された限りは答えようと無いんですよ。自ら靖国問題をこだわらと、言ったことじゃなくて、いっつも皆さんの質問に答えていっているわけです。色々な説明には他のことも言いたいんですけれども、一番マスコミが取り上げるのは靖国参拝のことでしょう。まぁ、そういうのは、止めた方がいいといっても聞かないですから、マスコミは。いつでもこだわっているのはマスコミじゃないでしょうか。あるいは私に反対する方々じゃないでしょうか。そういうのも踏まえてね、これはいつ行っても同じだなぁと、思いました。
■来月のご退陣の前に、直接不戦の近いと戦没者慰霊の意で参拝なさっているのだということを中国韓国の首脳と直接会って理解を求めるためにご説明する意向はないですか。
◇今までの、日中首脳会談、日韓首脳会談においてもその考えを伝えてあります。何回も。いつでも会えば中国側が韓国側が靖国に参拝するなと言えば、いつも、中国側韓国側の考えとは私は違うと言うことを説明しています。今、お話ししたような考えを説明しております。これは平行線です。外交カードにはしないと、一つの条件を付けられて、これに従うか従わないか、それで首脳会談をする、しないを判断するというのは私は宜しくないと思っております。私はこれからも、中国韓国と友好的に発展しようと、未来志向でね考えた方がいいんじゃないかということを、再三、申し上げております。この考えに変わりはありません。
■総理大臣としての立場での参拝と言うことでしょうか。
◇総理大臣である、人間個人純一郎が参拝しているんです。
■公式の参拝と受け取って宜しいですか。
◇職務として参拝しているのではありません。
■今回の参拝が総裁選に与える影響についてはどのようにお考えですか。
◇それは総裁候補ジテンの考え方と、マスコミの皆さんが争点にしたがっている面が強いですから、それ如何でしょうね。
靖国神社に合祀されているA級戦犯の戦争責任については、どうお考えでしょうか。
◇それは、戦争の責任を取って戦犯として刑を受けているわけでしょう。それはご本人たちも認めているし、それはあると思いますが、それとこれとは別です。何回も申し上げているように特定の人のために参拝しているんじゃないです。戦没者全体に対して哀悼の念を表するために参拝しているんです。今言った、私は、主な三点、靖国参拝に反する人、よく考えていただきたい。考えは自由です。



小泉純一郎首相は2001年の自民党総裁選挙で靖国神社への終戦の日の参拝を公約に掲げ当選。自由民主党自民党)は政権与党なので、そのまま内閣総理大臣に就任し、毎年それぞれ2002年4月21日、2003年1月14日、2004年1月1日(元旦)、2005年10月17日(秋季例大祭初日)に参拝してきました。中国や韓国などから、A級戦犯が合祀されている靖国神社に首相が参拝することに強い反発がありましたが、日中・日韓友好論者を自称し「戦没者に心から感謝し哀悼の誠を捧げる」、「二度と戦争を繰り返してはならないという気持ちを込めて参拝する」と発言していました。しかし最近では「なぜ参拝を批判するのか分からない」という発言を繰り返していました。
小泉総理大臣は来月行われる自民党総裁選挙に立候補しない予定で、最後に公約を果たした形になります。

A級戦犯とは第二次世界大戦集結時に日本が受諾したポツダム宣言に基づき行われた極東国際軍事裁判(通称、東京裁判)で、「平和に対する罪」「人道に対する罪」で追訴された戦争犯罪人のことで、極東国際軍事裁判ではA級戦犯が一番重い罪でした。正確な定義は「平和ニ対スル罪即チ、宣戦布告ヲ布告セル又ハ布告セザル侵略戦争、若ハ国際法、条約、協定又ハ誓約ニ違反セル戦争ノ計画、準備、開始、又ハ遂行、若ハ右諸行為ノ何レカヲ達成スル為メノ共通ノ計画又ハ共同謀議ヘノ参加。」で、主に戦争を主導した当時の首相や大臣、軍の幹部がA級戦犯にされ、判決を受ける前に死亡したり精神障害を認められた3人を除いた25人が判決を受け、7人が絞首刑に、16人が終身刑に、2人が禁固刑に処されました。このうち、死刑や獄中死した14人が靖国神社に合祀されています。
極東国際軍事裁判では戦勝国が敗戦国を裁く形を取ったために、新しい罪が作られたり、証人の証言に偽証罪が問われなかったりと、多くの問題点が指摘されており、無効な裁判であるとする声がある一方、日本政府は判決の結果を受け入れています。(なお、結果のみ受け入れ、内容には同意していないという意見もあります。)現時点では東京裁判を覆す新たな裁判は開かれていません。
最近では、昭和天皇靖国神社A級戦犯が合祀されていることに不快感を持っていたことが明らかになったり、東条英機元首相(自信もA級戦犯として合祀されている)が靖国神社に合祀するのは「戦役勤務に起因」して死亡した人に限定するよう通達を出していた(この通達に沿えば東条英機元首相の合祀は不適切ということになる)ことが明らかになり、今までA級戦犯分祀に反対していた日本遺族会の幹部からも、A級戦犯分祀に前向きな発言が出るようになりました。

A級戦犯は1978年10月17日(秋季例大祭前日)に「昭和時代の殉難者」として靖国神社に合祀されました。戦死者以外が合祀されるのは異例です。合祀の経緯は1966年に当時の厚生省がA級戦犯祭神名票対象者に書き加えて靖国神社に送ったことから始まります。当時靖国神社第五代宮司を努めていた筑波藤麿宮司旧皇族出身)は、天皇陛下の参拝の妨げになることを危惧して合祀を止めていました。しかし厚生省から名簿を受け取った12年後の1978年3月20日筑波藤麿宮司が急逝され、松平永芳宮司靖国神社第六代宮司となりました。松平永芳宮司は、石田和外元最高裁長官(「英霊にこたえる会」会長)の推挙で就任、自衛隊一等陸佐で定年退職した人物で神職出身ではありません。松平永芳宮司極東国際軍事裁判に否定的でA級戦犯の合祀に積極的であったということで、就任からわずか数ヶ月での合祀となりました。合祀から半年後の1979年4月19日付けの朝日新聞紙面でスクープとして報道されました。
A級戦犯の合祀後、1979年4月21日に大平正芳総理大臣(キリスト教徒)が春期例大祭で参拝、1980年8月15日に鈴木善幸総理大臣が閣僚らと共に参拝、1981年8月15日と1982年8月15日にも参拝しています。そして、1983年1月5日、1985年8月15日に中曾根康弘総理大臣が参拝しました。1985年8月15日の参拝で、中曽根総理大臣は閣僚らとともに「公式」に参拝し、中国や韓国などからの反発を受けました。その後の裁判で、靖国神社への継続的な公式参拝違憲であるとされました。
その後しばらく首相による参拝は控えられてきましたが、1996年7月27日に橋本龍太郎総理大臣が11年ぶりに参拝。その後、小泉純一郎総理大臣の参拝が続きます。小泉総理大臣は公式な参拝か私的な参拝か明言を控えてきましたが、2004年春頃に裁判の結果を受ける形で私的参拝であると明言しました。
A級戦犯分祀については、全国大多数の神社を統括する神社本庁靖国神社靖国神社神社本庁には属していない)は、「分祀は不可能」という意見で一致しています。これに対し政治的に分祀を実行させようと意見や、靖国神社無宗教特殊法人化して解決しようという意見があるようです。



以下、首相官邸が公式に公表した記者会見全文。

【質問】 総理、今回はどのような気持ちで参拝されましたでしょうか。
【小泉総理】 これは毎回申し上げているのですが、日本は過去の戦争を踏まえ反省しつつ、二度と戦争を起こしてはならない。そして今日の日本の平和と繁栄というのは、現在生きている人だけで成り立っているのではないと。戦争で尊い命を犠牲にされた、そういう方々の上に今の日本というのは今日があると。戦争に行って、祖国の為、また家族の為、命を投げ出さなければならなかった犠牲者に対して、心からなる敬意と感謝の念を持って靖国神社に参拝しております。今年もこの気持ちに変わりはありません。
 今までの過去5年間の私の靖国神社参拝に対する批判をね、よく考えて見ますと、大方、3点に要約されるんじゃないかと思います。まず一つはね、中国・韓国は不愉快であると反発しているからやめろという意見。これはどうですかね、私は日中・日韓友好論者なんです。就任以来、現に中国や韓国との友好交流、様々な分野で拡大を続けております。そういう中で、どの国ともね、一つや二つ意見の違い、対立あります。それで、一つの意見の違いがある、不愉快なことあると、それによって首脳会談を行なわないことが良いのかどうかと、私はいつでも首脳会談を行う用意があると言っているんですよ。しかも、靖国神社参拝を条件にしてね、この参拝をしなければ首脳会談を行うと、するならば首脳会談行わないというのが、果たして良いのかどうか。私は、これはよろしくないと思っています。
 日本の首相というのは、民主的な手続によって選ばれた首相であります。日中間、日韓の間には様々な課題もある。私は今までの日中首脳会談、日韓首脳会談においても、未来志向で友好を図っていこうと、お互い、相互互恵、相互依存関係、これを深めていこうと、中国の発展、韓国の発展というのは日本に脅威というよりも、むしろ日本にとってもチャンスなんだという事をはっきり表明して、未来志向で友好、交流を進めていこうということを申し上げているんです。それに対して、私を批判する方、これは、しかし中国が嫌がっていることはやるなと、突き詰めて言うと、中国・韓国が不快に思うことはやるなということでしょ、これについて批判する方をどう思うか。
 もし私が一つの問題で私が不愉快に思う、仮にね、中国・韓国が日本の安保理常任理事国入りに反対しています。これは日本にとっては不愉快だと、だから私は中国・韓国と首脳会談行わないといったらどちらを批判するでしょう。私は中国が反対しても、韓国が反対しても、首脳会談いつでも行いましょうと言っているんですよ。今回もそうですね、私が拒否しているんじゃないんです。という事は、中国の嫌がることは止めなさいというのが靖国参拝批判の一つですね。中国に不快な思いをさせちゃいけません。中国のいうことを聞きなさい、韓国のいうことを聞きなさい、そうすればアジア外交が上手くいきます。私は必ずしもそうじゃないと思いますね。一つや二つ、どの国も意見の違いや対立あります、そういうのを乗越えて未来志向で友好関係を進展させていくのが、日本としても他国にしても大事じゃないでしょうか。
 中にはね、小泉はアメリカと親しいと、アメリカのブッシュ大統領靖国参拝するなと言えばしないだろうと。そんなことはありません、ブッシュ大統領靖国参拝するなと私に言ったとしても、私は行きます。もっともね、ブッシュ大統領はそんな大人気ないことは言いませんけどね。
 もう一つはね、A級戦犯が合祀されているから行っちゃいかんという議論。これはね、私は、特定の人に対して参拝しているんじゃないんです。この戦争でね、苦しい思いをされ、できれば避けたかった、戦場に行きたくなかった多くの兵士がいるんです。そういう方々の気持ちを思ってね、何という苦しいつらい体験をせざるを得ない時代に生まれたのだろうかと、そういう犠牲者に対してね、心からやっぱり哀悼の念を表すべきだなと、これ日本の文化じゃないでしょうか。特定の人がいるから後の人のことは考えなくていいと、一部の、自分では許せない人がいるから、それより圧倒的多数の戦没者の方々に対して哀悼の念をもって参拝するのが何故いけないのか、私はA級戦犯の為に行っているんじゃないですよ。多くの戦没者の方々に哀悼の念を表す。二度とこのような苦しい戦争をさせてはいけない、そういう気持ちで参拝しているんです。
 それと第3点、憲法違反だから靖国神社参拝しちゃいかんという人がいます。これもね、憲法第19条、第20条、これを良く読んで頂きたい。私は神道奨励するために靖国神社行っているんじゃありません、今説明したように。また過去の戦争を美化したり、正当化したりするために行っているんじゃありません。また軍国主義を称揚する、そういうような気持ちで行っているのではありません。今申し上げたように、二度と戦争を起こしてはいけないと、戦没者に戦争に行って斃れた方々、こういう方々の犠牲を片時も忘れてはいけないと、そういう気持ちでお参りしているんです。そして、第19条の思想及び良心の自由はこれを侵してはならない。これどう考えますか、正に心の問題でしょ。これを日本の首相が日本の施設にお参りする、お祈りする、それを、外国の政府もっともだといって、小泉はいかん、小泉を批判する。これが本当に良い事なのかどうか、今の日本の誰にでも許されている自由という問題をどう考えるのか。
 私は伊勢神宮にも毎年参拝しています。その時には何名かの閣僚も随行しています。別に私は強制していません。そして、皆さんの前で神道形式に則って伊勢神宮に参拝しています。その時に憲法違反という声起こりませんね。何故なんでしょうか。私はこういうことから、賛否両論あっていいんです、日本は言論の自由認められていますから、今までもこういう事を私は答弁なり、普段の話でしているんです。今回も全くその同じ気持ちで参拝しているんです。
【質問】 何故、今回、終戦の日の8月15日を選ばれたのでしょうか。
【小泉総理】 これはね、最初、多くの方々が8月15日だけはやめてくれと、様々な方から言ってまいりましたね。そういう方々の意見も聞かなきゃいかんなということでね、敢えて15日を避けて参拝してきました。8月13日、或いは4月、10月、1月と、しかし、8月15日を避けても、いつも批判や反発、そして何とかこの問題を大きく取り上げようとする勢力、変わらないですね。いつ行っても同じです。ならば、今日は適切な日ではないかなと。これから戦没者の追悼記念式典もおこなわれます。私はこれから千鳥が淵の戦没者墓苑にお参りをします。戦没者の追悼式典にも出席します。適切な日だなと判断いたしました。
【質問】 去年、参拝した際は、昇殿をせずに、記帳もしませんでした。今回の参拝では、モーニング姿で、内閣総理大臣と記帳して、昇殿もしたということなんですけれども、その理由についてお聞かせください。
【小泉総理】 今、お話したようにね、今日は戦没者の追悼式もありますし、千鳥ヶ淵戦没者の墓苑にもお参りしますし、その時にはこの服装で行きますしね、私は、きっちりと昇殿、本殿に参拝した方が、今日は皆騒いでいますから、あのような、去年みたいな形でいくと警備の方も大変でしょ。皆さん、大勢の方々が見えてるしね、そういうことも考えて本殿に参拝するのが適切じゃないかなと思いました。
【質問】 2回目の参拝の時の所感の中では、総理は、終戦記念日やその前後の参拝にこだわって、再び内外に不安や警戒を抱かせることは、私の意に反するとしていました。今日の参拝は、その所感と矛盾するのではありませんか。
【小泉総理】 矛盾しません。それは過去5年を踏まえて、いつ行っても問題にして、混乱にしようとする勢力があるんです。それは仕方ないんです。そういうことを踏まえて、過去の経験が生きてきたんですね。いつ行っても参拝に、なんとか争点にしようとか、混乱させようとか、騒ぎにしようとか、国際問題にしようとかいう勢力があるんです。これに対してね、いけないと言ったって、それは、日本は言論の自由が認められてるんですから、どうにもなりません。ですから、いつ行ってもこういう騒ぎにしようという勢力があるんですから、8月15日に行っても、適切じゃないかなと。
 また、むしろこだわっているのは、毎回、こだわろうという勢力がいるんですよ、私が、今まで靖国神社の問題も、質問された時以外は答えたことがないんですよ。自ら、靖国問題をこうだああだと言ったことはなくて、いつも皆さんの質問に答えて言っているわけです。いろいろな説明や他のことも言いたいんですけれども、一番マスコミが取り上げるのは靖国参拝のことでしょ。そういうのは、やめた方がいいと言っても聞かないですから、マスコミは。いつでもこだわっているのはマスコミじゃないでしょうか、或いは、私に反対する方々じゃないでしょうか。そういうのも踏まえてね、これはいつ行っても同じだなと思いました。
【質問】 来月のご退陣の前に、直接、不戦の誓いと戦没者追悼の意で参拝なさっているんだということを、中国、韓国の首脳と会って、理解を求めるためにご説明する意向はないのですか。
【小泉総理】 今までの日中首脳会談、日韓首脳会談においても、その考えを伝えてあります、何回でも。いつでも会えば、中国側が、韓国側が、靖国参拝するなと言えば、いつも、中国側、韓国側の考えと私は違うということを説明している、今、お話したような考えを説明しております。これは平行線です、外交カードにはしないと、一つの条件をつけられて、これに従うか、従わないか、それで首脳会談をする、しないを判断するというのは、私はよろしくないと思っております。私は、これからも中国、韓国と友好的に発展しようと、未来志向でね、考えた方が良いんじゃないかということを、再三、申し上げております。この考えに変わりはありません。
【質問】 今回は記帳されていますが、総理大臣の立場としての参拝ということでしょうか。
【小泉総理】 総理大臣である、人間、小泉純一郎が参拝しているんです。
【質問】 公式な参拝と受け取ってよろしいのですか。
【小泉総理】 職務として参拝しているものではありません。
【質問】 今回の参拝が、総裁選に与える影響についてはどのようにお考えですか。
【小泉総理】 それは総裁候補自体の考え方と、マスコミの皆さんが争点にしたがっている面が強いですから、それいかんでしょうね。
【質問】 改めて、靖国神社に合祀されているA級戦犯の戦争責任については、どうお考えになるか、お願いいたします。
【小泉総理】 それは戦争の責任をとって、戦犯として刑を受けているわけでしょう。それは本人達も認めているし、それはあると思いますが、それとこれとは別です。何回も申し上げているように、特定の人のために参拝しているんじゃないです。戦没者全体に対して、哀悼の念を表するために参拝しているんです。今、言った、主な3点、靖国参拝批判する人、よく考えていただきたい。考えは自由です。