給食費と国民年金とNHKの受信料

昨日2007年1月24日、文部科学省が学校給食費の滞納について行った調査の結果を発表しました。それによりますと、2005年度の小中学校での給食費の未納は全体の約1%にあたる9万8,993人、金額にして22億3,000万円(給食費全体の0.5%)だということです。このうち、経済的な理由で給食費が払えないと答えたのは33%、60%の人は払いたくないから払っていないということでした。これを受けて一部の学校や自治体では法的措置にでる所もでてきているということです。
あるネット上のアンケートでは、給食費を納めない親について、「その子どもには給食を出さないようにするのがよい」という回答がトップになっていました。確かに面子がありますからお金を出す親もいるでしょうが、…では、なぜ給食費を払わないといけないのでしょうか。親に誤った意識を持たせる恐れが強いですし、開き直ったりしたら、それこそ子どもに悪い影響が及びます。
最近、似たような話が多いように思います。例えば、国民年金NHKの受信料の未納問題。自分がお金を払わなくても、自分がサービスを受けられないだけだから、それでいいじゃないか。…ご存じの通り、国民年金は物価スライドを実現するために、今まさに納められた年金は、納められたその時にお年寄りである人に支払われる仕組みになっています。ある意味では大がかりなネズミ講で、子どもの数が減ったり、年金未納が増えれば成り立たない制度なのです。よく、自分が納めた年金が、運用されて増えた後、老後に戻ってくるんだと勘違いしている人がいますが、国民年金はそうではありません。
NHKの受信料も同様です。CSやWOWOWスターチャンネルなどの有料放送の料金は「視聴料」といいますが、NHKのはテレビの受像器設置に対して料金を徴収する「受信料」です。これはNHKの運営だけでなくテレビ放送を円滑に発展させ技術開発等を行うために、テレビを設置している人から公平に費用を負担してもらうための制度なのです。(もちろん、国営放送ではない、公正な報道を行う「公共放送」を維持するためにも利用されていますが。)
給食費に至っても状況は同じで、給食などという物は、大量に作るから安く提供できるのであって、給食を受ける子どもが減れば価格が上がり、制度の維持は難しくなります。(給食費を払っていない子どもが無銭飲食で、他の給食費を払っている子どもにしわ寄せが行くという問題もありますが、ここでは置いておきます。)
平成16年度の国民年金の未納率は63.6%、NHKの受信料の未払いは100万件を超えています。自分に都合の悪くないことについて、これら公共料金を納めないのはモラルの低下が大きな原因であると思います。
しかし、単純にモラルの低下だけが原因でしょうか。例えば国民年金の未納については少子化によって年金制度が破綻する公算が高くなっています。少なくても少子化傾向がこのまま改善せず、年金制度も変更されなければ破綻します。払っても意味のない年金を納付する人は、よほどお人好しなのだと思います。NHKについても、公共放送の存在意義やテレビ技術について一定のメドが付いたので、受信料が必要ないという考えもあります。番組を放送する前に与党・自民党の幹部(現安倍総理大臣や麻生外務大臣等)に番組の内容を報告して、番組内容を変更したという疑惑もありましたし。
給食費についても、親は多分、子どもに給食を出して欲しいとは考えていないのだと思います。給食は勝手に出てくる。今まで、皆が給食費を払っていたから自分も払っていたけど、他の人が給食費を払わないのであれば、自分も払わなくてもいいかな…と。恐らく給食が出てこなくなったらお弁当をもたせるなり、給食費を払うなりするでしょう。
もっと抜本的な内容について考えるべきだと思います。つまり、給食とは何なのか、現在給食は必要なのか、必要だとして給食費をどの様に回収するのがよいのか。飽食の現代において食に窮する児童生徒は少数で、逆にアレルギーなどで給食を取れない子どもが増えています。給食として一斉に同じ食事を提供する必要性は低いように思います。教育の一環として配膳や後片付け、協調性の学習などを目的として現在の給食が必要だとしても、給食費を個別に集める必要があるでしょうか。子どもは社会全体で育てるものであり、教科書などと共に税金で払うということも可能ではないでしょうか。国民年金NHKの受信料についても同様です。
そもそも何故給食費を回収するのか、国民年金NHKの受信料は何のために必要なのか。そのところをなおざりにして、マナーの問題に転嫁していたことに、未納問題拡大の原因があるのではないでしょうか。