国民投票法成立

2007年5月14日午前に開かれた参議院本会議にて、日本国憲法の改正手続に関する法律案(いわゆる国民投票法案)が与党の自由民主党自民党)・公明党の賛成多数で可決されました。対案を提出している民主党からは渡辺秀央議員1人が賛成票を投じました。民主党案では憲法に限らず重要な法案については国民投票が行えるとしている他、16歳以上であれば投票できるとしています。また与野党を問わず欠席する議員が数名いました。

渡辺秀央議員「政治家としての信念だ。民主党の対応は、選挙を意識した不純なもので、何らかの処分があるかもしれないが、甘んじて受ける」

今回成立した「日本国憲法の改正手続に関する法律(国民投票法)」の要旨は以下の通りです。衆議院議員立法の形で提出されました。

  • 施行:成立から3年後の2010年5月14日
  • 対象:憲法改正
  • 発議:衆議院参議院それぞれ2/3以上の賛成。関連する項目ごとに区分して発議。
  • 有権者:18歳以上の日本国民(施行までに選挙権年齢を18歳以上に引き下げる。引き下げられない場合は現行の20歳以上。)
  • 投票方法:「賛成」か「反対」の文字を丸で囲む投票用紙に「○」か「×」
  • 改正に必要な投票数:有効投票総数の過半数
  • この夏にも憲法審査会が衆参両院に設置されるが、施行まで憲法改正案の提出・審査はできない(憲法改正の骨子案や要綱の作成は可能)
  • 公務員は地位を利用した国民投票運動が禁じられる
  • テレビ・ラジオでの広告放送は投票日までの2週間は禁止(同法で定められた広告を除く)
  • 国民投票に関し異議がある場合(不正などがあったと思われる場合)、中央選挙管理会を被告に東京高等裁判所で訴訟を提起できる。この場合、裁判所は他の訴訟の順番にかかわらず速やかに裁判を行う。(但し緊急時を除き、無効が確定されるまでは改正が有効。)無効が確定した場合には再投票。

現行の日本国憲法では、憲法の改正について次のように定めています。1947年5月3日に憲法が施行されてから60年、具体的な手順を定める初めての法律が成立したことになります。

第九十六条【憲法改正の手続】
1 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。

民意を問うて改憲するということであれば「日本国民の総数の半分の票があれば改正できる」とするのが適当だと思いますし、法律でもそうであって欲しいのですが、憲法を素直に読めば「投票結果の過半数の賛成」と書かれているので…、まぁ…憲法に沿うように作られた法律ではあるわけで、反対する理由にはならないか。
ちなみに、国民投票法に基づく国民投票を実施した場合、1回当たり850億円の費用が見込まれていると言うことです。



ブログを見て回るに、法案成立について賛成1:反対9ぐらいの印象。やはり憲法9条改正に繋がるのではないかという危機感が大きいみたい。だいたい憲法を改正するにも、改正する内容がはっきりしないんですよね。改正派の中で一番大きな理由が「アメリカに押しつけられた憲法だから全面的に改正すべき」という身を伴わない国粋的な内容。自国の憲法は自国で作りたいという気持ちは分かりますし、そういう意見があってもいいとは思うけど、現状に不満がない以上、必ずしも必要ではない。他に環境権とかよく分からない権利を憲法に盛り込むのとか、戦争放棄の撤回とかが続くわけですが、こちらも必ずしも国民が強く求めているわけではない…と。
まぁ、憲法に規定があるのに法律がないというのは不自然ですし、改正法もこんなものだと思うので、改正法が成立したことについては特に思うことはありませんが…、今後の流れを注視したいです。